
バラを育てていると、ある日ふと気づく白っぽい斑点や葉の色あせ、さらには葉の裏に細かいクモの巣のような糸が見えることがあります。
これらはハダニの症状であり、特にバラでは被害が進行しやすいため注意が必要です。
この記事では、バラがハダニにやられたらと悩んでいる方に向けて、ハダニにやられたときの対策や駆除方法、さらには大量発生したらどうすればよいかについて詳しく解説します。
まずはハダニが発生する原因として好む環境や湧く時期について解説し、ハダニが発生しづらい最適な環境の整え方をご紹介。
加えて、ハダニが嫌うものを活用した予防法や発生初期の駆除方法も紹介します。
また、被害が拡大している場合には薬剤散布が必要ですが、正しい選び方や散布時の注意点があるので詳しく解説します。
よくある疑問として「オルトラン」という薬剤は効果があるのか?がありますが、それについても回答。
葉の裏にクモの巣状の糸が見られたら、それはすでにハダニが繁殖しているサインです。
放置すれば葉が落ち、株全体の生育にも悪影響が出るため、早めの対応が大切です。
ハダニの対策についてお悩みの方は、この記事を参考に、早期発見と的確な駆除を心がけてください。
バラがハダニにやられたら?症状と原因
- ハダニの症状を見分ける方法
- ハダニが増える原因
- ハダニが嫌うものと活用法
- ハダニが湧く時期
- ハダニの特徴とクモの巣状の糸
ハダニの症状を見分ける方法

バラにハダニが発生したかどうかを判断するには、葉の状態をしっかりと観察することが重要です。
ハダニは非常に小さく肉眼では見えにくいため、直接姿を見るのは難しいことが多いです。
したがって、被害のサインを見逃さないようにすることが大切です。
まず、葉の表面にうっすらと白っぽい斑点やかすれたような模様が見られる場合は、ハダニの吸汁被害が進行している可能性があります。
これは、ハダニが葉の細胞内の液を吸い取ることで、葉緑素が壊れ、色が抜けるために起こる症状です。
また、症状が進行すると、葉全体が黄色くなり、最終的には枯れて落葉することもあります。
さらに、葉の裏側に白や赤っぽい小さな虫が密集している場合は、ハダニの存在が濃厚です。
このとき、虫眼鏡などを使うと、より正確に確認できます。
加えて、クモの巣のような細い糸が葉や茎に張られている場合も要注意です。
これはハダニが大量に繁殖した証拠であり、放置すると被害が急激に拡大する恐れがあります。
このように、葉の変色、葉裏の異常、クモの巣状の糸などが複数重なったときは、ハダニの被害を疑い、早急な対策を講じることが求められます。
ハダニが増える原因

ハダニの繁殖を助長する最大の要因は「乾燥した環境」です。
特に気温が高く湿度が低い状態は、ハダニにとって非常に快適な環境であり、爆発的に個体数が増加します。
クーラーの室外機近くなど、温かく乾燥した空気が出る場所の近くにバラを植えたりプランターを置かないようにしましょう。
もう一つの大きな原因として、「風通しの悪さ」が挙げられます。
鉢植えのバラなどを密集して配置していると、空気の流れが滞り、葉が湿らず乾燥しやすくなります。
これにより、ハダニが好む環境がさらに整ってしまうのです。室内管理やベランダでの栽培では特に注意が必要です。
また、「過剰な窒素肥料」もハダニの発生を招くことがあります。
栄養が過剰になると、植物の新芽が柔らかくなり、ハダニにとって吸汁しやすい状態となってしまいます。
バラの成長を促進したいあまりに肥料を与えすぎると、かえってハダニを呼び込む原因となるため、注意が必要です。
このような環境要因を理解し、定期的に葉水を与える、風通しをよくする、肥料のバランスを見直すなどの工夫をすることで、ハダニの増殖を防ぐことが可能になります。
ハダニが嫌うものと活用法

ハダニ対策をする上で、「ハダニが嫌うもの」を活用する方法は、薬剤に頼りすぎない自然な防除手段として有効です。
主に、ハダニが嫌うのは「高湿度」「日光」「匂い成分」などです。
これらをうまく活用することで、被害の拡大を抑えることができます。
まず、「湿気」を好まない性質を利用する方法があります。
具体的には、霧吹きなどでバラの葉裏にしっかりと水を吹きかける「葉水」が効果的です。
とくに朝の時間帯に行うと、日中の高温によりすぐに乾くため、植物に負担をかけにくいという利点もあります。
ハダニは水分に弱く、葉の表面が濡れていると活動しづらくなるため、葉水をこまめに行うだけでも予防効果が期待できます。
また、天然由来の忌避剤として「ニームオイル」や「木酢液」なども有効です。
これらにはハダニが嫌がる成分が含まれており、散布することで寄り付きにくくしたり生殖などのハダニの繁殖サイクルを鈍らせる効果があります。
さらに、「天敵昆虫」を利用する方法もあります。
ハダニを捕食する「ミヤコカブリダニ」などは、農業の現場でも利用されている実績があり、化学薬品に頼らない持続的な防除として注目されています。
しかしこれらの天敵昆虫は、無農薬の環境つまり「自然のバランス」の中でこそ存在します。
病害虫の予防も必要ですが、薬剤散布をしすぎるとこうしたハダニの天敵も全くいない環境となり、ハダニなど特定の生物が大量発生発生してしまう原因となります。
多少の害虫の被害は薬ではなく手で駆除したり、被害が出た葉や枝を取り除くことで対処し、バラ全体が枯れるような大きな被害が出ないのであればある程度の被害は許容するという考え方も大切です。
こうした自然由来の手法は即効性には劣るものの、継続して使用することでハダニの発生リスクを下げることができます。
日々の観察と予防の積み重ねが、バラを守る鍵となるでしょう。
ハダニが湧く時期

ハダニの発生時期を理解しておくことは、予防策を立てるうえで非常に重要です。
ハダニは気温が上昇し、湿度が下がる初夏から秋にかけて活発になります。
具体的には5月以降、特に梅雨明けから9月にかけては注意が必要です。
この時期は、バラが最も美しく花を咲かせる時期でもあり、葉の展開も盛んになるため、ハダニにとっては絶好の繁殖タイミングです。
気温が25度を超えるようになると、ハダニの成長スピードが上がり、1週間ほどで卵から成虫へと成長するサイクルに入ります。
このため、見つけたときにはすでに個体数が増えているケースも珍しくありません。
また、秋になって気温が下がるといったん活動が鈍くなりますが、完全には死滅せず、葉の裏や茎のすき間などでひっそりと越冬します。
そして、春先に気温が安定してくると、再び活動を始めるのです。
このように、ハダニは一年を通じて発生のチャンスをうかがっており、特定の時期だけの問題ではないことがわかります。
したがって、気温が上がる時期に入る前から予防措置を始めることが大切です。
例えば、春の早い段階で葉水を定期的に行い、風通しのよい環境を整えることで、ハダニの発生を事前に抑えることが可能になります。
定期的な観察と早期対応が、被害を最小限にとどめるポイントです。
ハダニの特徴とクモの巣状の糸

ハダニはクモの仲間に分類される微小な害虫で、主に葉の裏側に寄生して植物の汁を吸う性質があります。
バラに寄生するハダニで最も多いのが「ナミハダニ」という種類で、成虫の見た目は黄色から黄緑色をしており、0.5ミリほどで非常に小さく肉眼で確認するには葉をじっくりと観察しなければなりません。
活動は主に乾燥した気候で活発化し、気温が25~30度程度になると爆発的に繁殖する傾向があります。
ハダニの被害が進行すると、葉に細かい白や黄色の斑点が現れ、やがて全体が黄変し、光合成が十分にできなくなって植物の生育を妨げるようになります。
そして、見逃しがたい特徴の一つが「クモの巣状の糸」です。
この糸はハダニが集団で繁殖し始めた際に、移動や保護のために分泌するものです。
糸は主に葉と葉の間や葉と茎の接合部などに見られ、薄く細かいため風に揺れる様子もあり、見た目にも不快感を覚える人が少なくありません。
この糸が見える状態はすでに被害が深刻化しているサインであり、即時の対応が求められます。
つまり、ハダニの発見が遅れると、植物が弱るだけでなく、隣接する植物にも被害が拡大するリスクが高まるのです。
初期の兆候を見逃さないよう、定期的に葉の裏側を観察することが、被害の拡大を防ぐ第一歩となります。
バラがハダニにやられたら?予防と対策
- 駆除方法の基本
- 薬剤の選び方
- ハダニが大量発生したらすべきこと
- ハダニにやられたミニバラの対策
- オルトランのハダニへの効果
駆除方法の基本

ハダニを効果的に駆除するためには、複数の方法を組み合わせて行うのが基本です。
まず重要なのは、早期発見と物理的な除去そしてなにより大量に繁殖させないことです。
葉の裏側に異変を感じたら、まずは水で丁寧に洗い流すことを試みましょう。
前述した葉水を行うことでハダニを洗い落とすだけでなく、高湿度にすることで活動を抑制する効果もあります。
さらに、前述した天敵を導入する方法もあります。
先程紹介したカブリダニ系のほかにもテントウムシやケシハネカクシなど、ハダニを捕食してくれる自然の味方はたくさん存在します。
ただし、この方法は屋外向きであり、自然のサイクルに任せる方法なので、ハダニの発生直後で数が少ないうちや、予防方法としては効果的である事は頭に入れておきましょう。
また、被害が広がっている場合には薬剤の使用が必要になることもありますが、後述の通り、薬剤は種類によって効果に差があるため慎重に選ぶべきです。
最後に、有機的な駆除方法として「牛乳スプレー」や「石けん水スプレー」などがハダニの気門(呼吸口)を塞ぎ、窒息させることで効果を発揮する方法がありますが、これらはバラに付着した際に細胞などに悪影響があったり、種類や体質によっては葉焼けを起こすリスクもあるとされ、基本的にバラには推奨されていません。
どうしても試してみたい場合は、目立たない葉などでテストすることをおすすめします。
いずれにしても、定期的な観察と清潔な環境づくりが、ハダニの発生・再発を防ぐための基本方針となります。
ハダニの他にも様々な害虫がいますが、下記の「ペチュニアの花びらの虫食いを防ぐための効果的な方法」の記事で詳しい駆除方法や予防法を紹介しています。
興味のある方はぜひ合わせてご覧ください。
薬剤の選び方

ハダニ対策に薬剤を使用する場合、いくつかのポイントを押さえて選ぶ必要があります。
というのも、すべての殺虫剤がハダニに有効なわけではないためです。
ハダニは吸汁性害虫であり、一般的な接触性殺虫剤では効果が薄いケースも少なくありません。
まず確認すべきは、薬剤のラベルや説明書に「ハダニに有効」と記載されているかどうかです。さらに「卵に効くか」「成虫に効くか」も大きな違いとなります。
ハダニは繁殖スピードが早いため、卵から成虫まで幅広く効果を及ぼす薬剤が理想的です。
代表的な薬剤としては「ダニ太郎」「コロマイト」などがあり、特に発育初期のハダニに対して高い効果を発揮します。
薬剤を選ぶ際は、同じ成分のものを繰り返し使うと耐性がついてしまうこともあるため、作用の異なるものをローテーションで使うことが推奨されています。
特にハダニは卵から成虫までのサイクルが7~10日と非常に早く、世代が変わる時に突然変異で薬剤への耐性をもった個体が生まれることがよくあります。
また、農薬登録のある製品を選び、用法・用量を守って安全に使うことが大切です。
一方、「ムシラップ」という薬剤は糊のようなものでハダニを包み込み動けなくすることで、成長や生殖をさせずに駆除するタイプで、被害拡大を防いだり、発生初期の繁殖の予防的な使用に向いています。
これらの行動を制限する薬剤は直接虫を駆除する効果はないものの、耐性がつくことはほぼ無いので、ローテーションせずに何度も繰り返し使える点もメリットの一つです。
上記の殺虫剤タイプの薬剤と併用するのがおすすめです。
このように、薬剤選びは単に「効くかどうか」ではなく、使用目的や植物の状態、環境に応じた適切な判断が必要になります。
必要に応じて園芸店や専門家に相談するのも一つの方法です。
ハダニが大量発生したらすべきこと

ハダニが大量に発生してしまった場合は、速やかかつ多角的な対処が必要です。
放置すれば植物全体が弱り、枯死に至るケースもあります。
この段階では、日常的な水やりや葉水だけでは不十分で、より強力な手段を講じなければなりません。
まず最初に行うべきは、被害の大きい葉や枝を剪定することです。
特に糸が見えるほどの密集地帯は、そこで繁殖が進んでいる証拠ですので、思い切って取り除くことが再発防止にもつながります。
切り取った部分は袋に密封し、他の植物に影響を及ぼさないよう速やかに処分してください。
その上で、先程紹介したような専用の殺ダニ剤を使用することが求められます。
一般的な殺虫剤では十分な効果が得られない場合も多いため、「ハダニ専用」もしくは「殺ダニ剤」と明記された製品を選びましょう。
使用前には植物への影響や適応作物を確認し、説明書どおりに希釈や散布を行うことが大切です。
散布するときはハダニが潜む「葉の裏側」を集中的にかけましょう。
また、枝が混み入っている株の中心は葉が重なり合って散布もれが発生しやすいので、しっかりとかき分けてすべての葉に薬剤がいきわたるようにするのがポイントです。
また、薬剤だけに頼るのではなく、環境の見直しも同時に進めてください。ハダニは乾燥を好むため、空気の湿度を上げる工夫や、日々の葉水の再開は予防につながります。
さらに、植物同士の間隔を広げて風通しを良くし、密集した環境を避けることも重要です。
最後に最終手段ですが、上記のような対処法を全て試してもハダニの被害が収まらず、バラが枯れてしまいそうであれば、弱った枝を切り取り葉を全て取り去ることで、ハダニが寄生する場所を無くす方法があります。
そして残った枝を紐などでぎゅっと縛って一つにまとめて、水をはった水槽などに20~30分つけこむことで、ハダニを完全に駆除できます。
その後はバラの生命力を信じて、また葉が出てくるのを待ちましょう。
このように、被害が進行してからの対応は手間がかかりますが、ひとつひとつの対策を丁寧に行うことで、再び元気な状態へと回復する可能性も十分に残されています。
ハダニにやられたミニバラの対策

ミニバラは葉が小さく密集しているため、ハダニの被害に遭いやすい植物の一つです。
被害に気づいた段階で迅速に対応することが、回復への第一歩となります。
基本的には前述した駆除方法となりますが、復習として確認していきましょう。
まず、症状が出ている葉を丁寧に確認し、斑点や変色のある葉を中心に、被害がひどいものは剪定して取り除きましょう。
すでに糸が確認できるようであれば、そこにハダニが集中的に繁殖していると考えられるため、部分的な剪定だけでなく株全体の見直しが必要になる場合もあります。
次に、水圧を利用して葉の裏側を中心に洗い流す処置が有効です。
シャワー状の水を使って洗い流すことで、ハダニを物理的に除去できます。
これにより農薬を使う前の段階でも、ある程度の個体数を減らすことが可能です。
その後のステップとして、薬剤の使用を検討しましょう。
ミニバラは品種によっては薬害を受けやすいことがあるため、まずは目立たない箇所でテスト散布を行ってから全体に広げると安心です。
また、葉の裏側にしっかりと薬剤がかかるよう、葉の下側から散布するよう注意が必要です。
さらに、予防の意味でも室内管理をしている場合は特に湿度を意識することが大切です。
空気が乾燥しすぎると再発のリスクが高まるため、加湿器を利用するなどして湿度を保ちましょう。
このように、ミニバラのハダニ対策には丁寧な観察と手入れが欠かせません。
定期的なチェックと早めの対応が、ハダニの再発防止とミニバラの健やかな成長につながります。
オルトランのハダニへの効果

オルトランは広く使われている浸透移行性の殺虫剤で、多くの園芸用植物に対応しています。
ただし、ハダニへの効果という点では、限定的であることを理解しておく必要があります。
オルトランは土に撒いたり株元に処理することで、植物体内に成分が吸収され、害虫が植物を吸汁した際に効果を発揮するという仕組みです。
そのため、アブラムシやコナジラミなどの吸汁性害虫には非常に高い効果を示します。
一方で、ハダニには有機リン剤が効果があるとされていましたが、耐性をもつ種類が増え、現在はあまり効き目がないという声も多く、専用の殺ダニ剤と比べると駆除力は弱いとされています。
ただし、まったく無意味というわけではありません。
他の害虫の同時防除を目的として使う場合には、オルトランは便利な選択肢です。
注意点としては、植物の種類によっては薬害が出ることもあるため、事前に使用可能かどうかを確認しておきましょう。
つまり、オルトランはハダニにはあまり効果が無いものの、正しい使い方と他の手段との併用で、害虫対策の一部として活用することは可能です。